
前回のヘカテの話の中でクローン、つまりトリプルゴデスの中でも、老婆の女神であるクローンとは、「賢い女性」を代表するアーキタイプであり、祖母や母親でもあり、また時としてはヒーラーでもある究極の癒しのパワーをもつ存在もこのクローンが持っているものです。人生を通して多くを見て経験してきた女性は皆、クローンなのです。
お気づきのように私たちの周囲にも必ずクローンが何人かいるはずです。また多くの女性は将来、クローンになる資格があるのです。しかし、現実的な面をいうと、こういったクローンの活躍はよっぽどでないと社会では認められず、影の存在として彼女たちの智慧は誰にも知られないこともよくあります。それよりか、見捨てられることさえある時代なのです。特に西洋文明の影響を強く受けている社会では、とかく「賢い女」は嫌われることが多いのです。この「賢い女嫌い」は今に始まったことではなく、五千年ほど前から今に至っているのです。
さて、クローン、つまり「老婆の女神」はハワイの女神の話でも現れたマダム・ペレもそうでしたが、もともと太鼓の昔からある、実は月ではなく、太陽神であることが多かったのです。ですからこれにちなんで、中国やシベリアのシャーマニズムの世界には古くからある「虎の叔母」と呼ばれる神様もそうですし、日本ではアマテラスオオミカミが本来の意味で太陽神であり、クローンを代表する女神さまでありましょう。

エジプトでは、「ハトホル」と「サクメット」、バルド神話(ラップランド・フィンランド)の太陽神であり、春の女神ソウレ、北ヨーロッパのサンヌ、イヌイット神話のセドナなど、女神の名前を挙げればきりがないほど、クローンはたくさんいます。でもなぜ、クローンが「下弦の月」を代表する女神ではなく、太陽神なのか?
答えはシンプルです。皆のために太陽のように光を照らす存在だからです。このような彼女は私たち、誰もの内に存在する太陽の側面を思い出させてくれます。私たちの内なる光の部分は時として隠れてしまうこともありますが、絶えてしまうことなど決してないのです。そして今こそ、その内なる光を存分に外へ放つ時がやってきました。

そしてクローンの女神のシンボルやイコンは、鏡、井戸、糸車などあります。これら以外にも「天国の聖なる木」(生命の木)やトラもまた彼女を象徴するものです。そして鏡のシンボルはいうまでもなく、私たちが自分自身の姿を鏡に映し出すとき、女性は自然と無意識的にクローンに尊敬の意を捧げているのです。

守護神でありながらも叡智を司る女神「ソフィア」は、クローンを代表する原始キリスト教、グノーシス派の女神です。ソフィアはギリシャ神話の記憶の女神ムネモシュネの化身だと伝えられています。賢い老婆、ムネモシュネは、当時の家長制度の社会がスタートしていた古代ギリシャでは、アポロによって彼女は幾つにも切断され、力を奪い取られてしまいました。いくつものピースに切断されたムネモシュネはミューズ神となり、その数ははじめは3人の女神、それから9人、11人、12人と見る見るうちに切断されたムネモシュネからミューズ神は生まれました。いうまでもなくミューズ神は、皆、女性のインスピレーションと叡智のあらゆる側面を司る女神たちとなりました。その中には科学者の女神も誕生しました。ですから、」科学者は、最初は女神だから男ではなく女だったというのが本当のところかもしれませんね。しかし、ギリシャ神話の女神たちは自由な女神たちではありませんでした。アポロの支配下におかれていたのです。